さよならピアノソナタ encore pieces

アスターに言われてこの間の土曜日に買ったさよならピアノソナタを今ごろ読んだ。 いや、買って3日で読むのはかなり早いほうだ。とらドラ・スピンオフ2!は8月31日に買ったが、まだ手をつけていない。 そう考えると、買って3日で小説を読み始めることがいかに早いか分かるだろう。 今回のencore piecesは、本編は4巻で終了しているが、その後日談を5編の短編で収録している。いや、5編のうち2編は過去の話のような気もするが、この際気にしないことにする。 なるほど、1話はやばい。これはニヤニヤが止まらない。部屋で笑いながら読んだ。 2話は4人のうち2人がいなくなったフェケテリコのサポートベーシストが苦悩する話。後日談でなぜか新キャラが出てくるという。いや、なかなか面白かったのだが。 今日は2話読んだだけで終わりにしておいた。 ちなみに、けいおん!の影響でオタクたちの間でバンドブームになっているが、これもバンドの話。けいおん!よりも音楽面に重きを置いている。(別にけいおん!よりこっちの方がいいねという意味ではない。私はけいおん!も好きだ。)ちなみに、この作品はアニメ化するほど人気があるとは思えないが、人気があったとしてもアニメ化するのは無理な気がする。例えば、次のような文がある。

けれど爆光と大歓声の中でオープニングナンバーが走り出すと、橘花の目は、ステージ中央のドラムセットに釘付けになった。

飛び散る汗と光がぶつかり合って虹を振りまき、シンバルが蝶のように飛び回り、その真ん中に彼女がいた。くりりと大きな目はスポットライトをはじき返すほどで、どれほど激しいドラミングが続いてもその顔には七色の笑顔が移ろいながら浮かび、スティックのタッチは触れただけで折れ曲がりそうなほど繊細に見えるのに、そこから弾き出されるビートは、雲まで吹き飛ばされそうなアッパーカットや、海の底まで叩き落されそうなボディブローなのだ。

さよならピアノソナタ encore pieces 119ページより

あるいは、後に読んだ部分なのだが、こういうのもある。

前略〜信じられないことに、ベースの突き上げるようなビートも聞こえてきた。リュウジは、背中に回したベースを空いた右手だけで弾いていたんだ。〜中略〜だってそのときは私の体内に、心音が、ツェッペリンを飛翔させ続けるエネルギーそのものが、何倍にもなって流れ込んできている最中だったんだ。そのうえ、リフの高まりが二巡した瞬間、私の耳元から発された歌声がマイクに叩きつけられた。心臓が破裂するかと思った。〜後略

さよならピアノソナタ encore pieces 266ページより

アニメ化するとしたら、このように表現されている音を実際に出さなければならない。この作品でも言われていることだが、その人の音はその人にしか出せない。だから、リアルの人が弾いた時点でそのキャラクターの音ではない。 そんなことを言い出したら、音楽をモデルにした作品の映像化は不可能になるのだが、さよならピアノソナタは「その人の音はその人にしか出せない」という部分を作品内で強調しているので、アニメ化すると矛盾が生じることになるのだ。 「だから無理だね〜」なんてことを、かつてアスターと話していた。