プラズマクラスターイオンを疑う

結構前に、SHARPからプラズマクラスターイオン発生器というものが販売されている。 「プラズマクラスター」は、シャープだけ もう、○○イオンでウイルス除去なんて謳っているのは、みんな疑似科学な気がしてならない。とりあえず、いろいろ突っ込んでみよう。 自然界にあるのと同じ+とーのイオンをプラズマ放電により作り出し放出。 イメージ図をみると、水素イオンとスーパーオキシドアニオン(O2-)が発生しているようだ。 普通、空気中で放電して発生するものはオゾンだと思うんだけどな〜 ミニ四駆などで、走らせた直後のモーターのにおいをかぐと、生臭いようなにおいがしないだろうか。あのにおいの正体がオゾンだ。ブラシと整流子から絶えず火花が出ているので、その火花によって空気中の酸素がオゾンになる。

オゾン溶解反応 このページによれば、オゾンは水に溶解すると反応を起こすらしい。 O3+OH → HO2+O O3+HO2 → 2O2+・OH O3+OH → O2+HO2 2HO2 → O3+H2O HO2+OH → O2+H2O スーパーオキシドアニオンO2-は非常に活性が高く、短時間でヒドロキシラジカル・OHに変化すると書いてある。 高校化学を少しでもやった人なら、スーパーオキシドアニオンを知らなくても、O2-なんてものが安定に存在するわけがないということは容易に想像がつく。 で、妥協してH+とOH-が発生したものだとみなすとすると、そんなのは別に普通の水だって1.0×10-7(mol/l)の割合で電離して発生しているのである。だから、特別な効果があるとは思えない。

ところで、オゾンの水への溶解を、空気中の水蒸気との反応と置き換えることにしよう。プラズマクラスターイオンは空気中を漂うイオンなので、水に溶解すると…という考えは使えないのだが、この説を使わないと考察が進まないので仕方ない。 第二部−3− 大気と海の科学 空気には、飽和水蒸気量という数値がある。その気温で含むことの出来る水蒸気の割合は決まっており、それを超えると液化してしまう。湿度100%のときに壁や床に水滴がつくアレだ。20度のとき、飽和水蒸気圧は23.38hPaだという。これを1気圧の1024hPaで割ると、約2.3%となる。放電したときにオゾンになる酸素の割合はとても低く、そのオゾンと反応するべき水蒸気の濃度も低い。オゾンが水に溶けたとしても全てが反応するわけでもない。すると、イオンとして考えられる物質の濃度はほとんどゼロに近い数字だ。これで除菌効果があるなら、恐るべき毒物のような気がするのだが…。

さて、これでは議論が進まないので、何らかの原理により水素イオンとスーパーオキシドアニオンが発生したとしよう。イメージ図では、イオンの周りを水分子が取り囲んでいるという。 スーパーオキシドアニオンは非常に不安定…ということは、とても反応性が高いということだ。すると、水分子が接触した時点で反応してしまう気がするのだが、そこら辺はどうなんだろう。 そして、カビ菌やウイルスの表面に付着したときのみOHラジカルに変化し…の部分。ここが一番胡散臭い。 カビ菌やウイルスは、一種のタンパク質の塊だ。そして、人間の体だってタンパク質からできている。なぜ、カビ菌やウイルスのタンパク質とは反応して、人間の体のタンパク質とは反応しないのかについては言及がない。OHラジカルは、たった2つの原子から出来ている粒子なので、タンパク質を区別する機構…などと考える余地もない。

世の中には無菌室というものがある。病気で免疫能力がほとんどなくなってしまった人のために、空気中の菌がいないとみなせる部屋のことだ。 どういう原理かといえば、単純に「空気中の塵を取り除く」というものだ。 どうしても無菌化したいなら、そのほうが早いし、とても分かりやすいのではないか。 仮にプラズマクラスターイオンの効果が本物だとしても、使うべきではないと思う。そんな菌のいない世界で暮らしていたら、ちょっと菌がいただけですぐ病気になってしまう。昔「抗菌グッズ」が流行ったが、同じ理由で好きになれなかった。なんでもかんでも菌がいなければいいという問題ではないだろう。 というか思ったが、発生したOHラジカルのせいでイオン発生器自体が侵されてしまう気がするのは気のせい?w 関連ページ マイナスイオンで非難 市民のための環境学ガイド